「なんでこんなに心が揺さぶられるんだろう」って、読み終わった瞬間、言葉が出なくなった作品。それが『タコピーの原罪』なんだよね。
タイザン5先生が描くこの短編漫画、ジャンプ＋で2021年12月から2022年3月まで連載された全13話の完結作品なんだけど、ページ数は少ないのに、感情の濃度がエグいくらい高くて…。たった数話のうちに、笑って、泣いて、ショックを受けて、最後には呆然とするくらい感動する。そんなジェットコースターみたいな体験を、読者に味わわせてくるんだ。
主人公は、ハッピー星から地球にやってきたタコピー。見た目はゆるキャラ系のタコ型宇宙人で、「ハッピー道具」で人間を幸せにしようとする純粋無垢な存在。でもその“善意”が引き起こすのは、思いもよらない悲劇の連鎖。なんか、ここまで「優しさ」と「残酷さ」が同居してる作品って、他にあんまりない気がする。
そしてタコピーが出会うのが、主人公の少女・久世しずか。小学生とは思えないほど大人びた目をした彼女は、学校でも家庭でも孤独を抱えていて、見るからに「助けて」って言えない子。最初は表情がほとんどない彼女が、少しずつタコピーとの交流で変わっていく姿に、読者もどんどん感情移入しちゃうんだよね。
だけど、この作品は“救い”だけじゃ終わらない。いじめ、家庭内暴力、無関心な大人たち、子ども同士の歪んだ関係性…。どこを切り取っても現実の闇が垣間見える。だからこそ、「なんで誰も助けてくれなかったの？」って、読んでるこっちが怒りたくなるくらいにリアルなんだ。
物語のカギを握るのが、タコピーの“ハッピー道具”と“時間巻き戻し”の設定。これって一見、便利なご都合主義に見えるけど、実はその能力にも大きな制限があって…。うまく使えなかったり、記憶を引き継げなかったり、そもそも道具の使い方自体がタコピーには理解できてなかったりする。ここがまた切ないポイントなんだよね。無力さとか、理解しきれないまま善意で突っ走る危うさが、めちゃくちゃリアルに刺さってくる。
しずかだけじゃなく、彼女の周りのキャラもめちゃ深い。たとえばしずかのクラスメイト・雲母坂まりなは、一見するといじめっ子だけど、その背景には家庭環境や承認欲求の問題があって…。単なる“悪役”で終わらせないのが、この作品のすごいところ。人ってこうやって複雑にできてるよね、って感じさせられる。
あと個人的にグッときたのが、作中の「誰かを救いたい」という感情が、必ずしも正解を導くわけじゃないってところ。しずかを救いたいタコピーの行動が、結果として悲劇を生んでしまうし、まりなの行動だって、自分の中では“正義”だったかもしれない。でもそのズレがどんどん大きくなって、取り返しがつかなくなっていく。この感覚、現実にもあるよね…。誰かのためにしたことが、逆に傷つけてしまう。そんな経験、きっと誰にでもあると思う。
『タコピーの原罪』って、読む前と後で自分の中の価値観が変わるくらいの衝撃をくれる作品。内容が暗いとか、重いって言われがちだけど、それだけじゃないんだよ。ちゃんと“愛”も描かれてるし、“赦し”や“希望”も見える。最終話の展開なんて、涙腺崩壊レベルだし、むしろここまで描き切ってくれたことに感謝したくなるくらい。
ちなみに2025年6月にはアニメ化も決定してて、全6話構成でNetflixやAmazonプライム、ABEMAでも配信される予定。制作はENISHIYAで、監督は『Dr.STONE』なども手がけた飯野慎也さん。キャラデザは長原圭太さんで、音楽は藤澤慶昌さんっていう、実力派スタッフが集結してるの。しかもタコピーの声は間宮くるみさん、しずか役は上田麗奈さんって、声の演技だけでも泣けそうな布陣。
個人的には、アニメ版でどう“あの感情”を映像で表現するのかすごく楽しみだし、あのラストシーンがどんな風に描かれるのか、今から震える…。映像作品になることで、より多くの人にこの作品のメッセージが届くといいなって思う。
正直、『タコピーの原罪』はめちゃくちゃ“しんどい”作品。でもその“しんどさ”が、ちゃんと意味を持ってる。人生って、どうにもならないことが多いし、大人だって正しい答えがわからない。だけど、そんな中でも「誰かの幸せを願うこと」って、やっぱり大事なんだって思わせてくれる。
まだ読んでない人がいたら、ぜひ今すぐ読んでほしい。読むだけで、きっと何かが変わる。いや、変わらざるを得ないくらい、強烈に心に残る物語だから。
